腰部脊柱管狭窄症の手術方法には、外科的手術低侵襲手術があります。外科的手術は脊椎を切除したり固定したりする方法で、効果は高いですがリスクや負担も大きいです。低侵襲手術は局所麻酔で行う方法で、切開しないのでリスクや負担は少ないですが効果が出るまでに時間がかかることもあります。


目次

腰部脊柱管狭窄症の手術方法

脊柱管狭窄症の治療方法には保存的治療として温熱療法やお薬での疼痛コントロール、リハビリがあります。痛みやしびれの緩和を目的としているため診断初期に保存的治療を提案されることが多いです。しかし、保存的治療で改善がなく、歩行困難や排尿障害などがある場合は外科的手術が検討されます。


腰部脊柱管狭窄症の手術方法一覧

DST法(ディスクシール治療)腰椎椎弓切除術脊椎固定術脊椎刺激療法(SCS)経皮的椎間板オゾン治療(PODT法)
入院期間日帰り約7日間約21日間トライアル約7日~10日間、埋め込み約10日~2週間日帰り
通院の有無基本的に必要なしありありあり基本的に必要なし
保険適応なしありありありなし
椎間板の修正・再生効果ありなしなしなしなし
再発率極めて低い高い極めて高い高い高い

※当院での自費診療手術と一般的な保険診療手術を比較しています。


腰部脊柱管狭窄症の手術方法別の治療効果やリスク

ディスクシール治療(DST法)

治療の概要やメリット

椎間板の損傷を塞ぎ、椎間板の修復・再生を目的とした治療法です。脊柱管狭窄症をはじめとする腰痛疾患に対応しており、切開なし、局所麻酔で治療を行うため外科的手術と比べても負担の少ない治療法です。

  • 手術時間:25分程度
  • 入院期間:なし

治療のリスクやデメリット

外科的手術と比べると僅かですが、感染症・合併症のリスクはあります。
また治療効果が発揮されるまでに3~6ヵ月程時間が必要です。

腰椎椎弓切除術

治療の概要やメリット

狭くなった脊柱管を広げる治療方法です。皮膚を1.5cm~2cm切開した後に1.2cm~1.8cmの円筒型の手術器具を体内に挿入して、先端についているカメラから映し出される映像を元にモニターで確認しながら追及の一部と靭帯を切除する方法です。脊椎固定術に比べて低侵襲で、傷口も比較的小さいため退院までの復帰が早いのが特徴です。

  • 手術時間:1時間程度
  • 入院期間:1週間程度

治療のリスクやデメリット

切開部分が狭くなるため視野が狭くなり複数個所に狭窄症がある場合や腰椎が安定していない場合は施術ができないこともあります。また広範囲に切除術を行う場合、感染症や合併症のリスクが高くなります。一度広範囲に施術した場合は再手術ができないこともあります。


脊椎固定術

治療の概要やメリット

医療器具を用いて脊柱管狭窄症となっている脊椎を固定させる手術方法です。全身麻酔を行い、背中から皮膚を切開し椎弓と呼ばれる脊椎の一部や椎間関節、椎間板や黄色靭帯を切除します。椎間板の代わりにスペーサーを挿入して、プレートをセットしロッドスクリューで固定する方法です。すべり症をはじめとする幅広い疾患に適応ができ、保険適応できます。

  • 手術時間:2~3時間
  • 入院期間:1ヵ月程度

治療のリスクやデメリット

脊椎固定術は切開範囲が広く、手術時間も長いため低侵襲手術に比べると感染症・合併症のリスクを伴います。
また術後のリハビリや固定による違和感や痛みを感じる場合も多く、再手術も難しい治療方法です。

脊椎刺激療法(SCS)

治療の概要やメリット

SCSは脊髄を刺激することで神経障害(痛みやしびれ)を緩和させることを目的とした治療方法です。手術をしてリード(電極)を脊椎と脊髄を包んでいる膜の間に入れ、刺激発生装置を埋め込みます。体外式のリモコンを使って痛みやしびれの度合いに応じて患者様自身で刺激の強さを調整できます。

  • 手術時間:トライアル1時間、埋め込み2~3時間
  • 入院期間:トライアル7~10日、埋め込み10日~2週間

治療のリスクやデメリット

リード線の断線・リードの位置がずれることがあり、その交換のため再手術になることがあります。また、装置は充電式で10年、非充電式で4~6年で刺激装置の交換が必要になります。その場合は再手術が必要になります。

経皮的椎間板オゾン治療(PODT法)

治療の概要やメリット

オゾン酸化を利用したオゾンを吹きかけることで脊柱管狭窄症の痛みを緩和させる治療法です。当院では痺れの症状が強い場合にも使用している治療法です。切開なし、局所麻酔での治療が可能です。

  • 手術時間:15分程度
  • 入院期間:なし

治療のリスクやデメリット

外科的手術と比べると僅かですが、感染症・合併症のリスクはあります。また治療効果が発揮されるまでに1~3ヵ月程時間が必要です。


腰部脊柱管狭窄症の手術後について

外科的手術の場合、入院やリハビリが必要になり最大で1ヵ月の入院、3か月間のリハビリが必要になります。低侵襲であれば入院期間は短くなります。当院のDST法やPODT法は入院の必要がなく、リハビリは専門のスタッフが常駐しているため一人ひとりの症状に合わせて運動指導を行っています。

腰部脊柱管狭窄症の手術後のリハビリテーション・運動について

外科手術の場合はリハビリを行う必要があります。手術後は筋力低下や感染症、血栓症の予防を目的としてリハビリテーションを行います。外科的手術後すぐの間は足首の運動などベッドの上でも行えるような運動を中心に実施します。腰に負担をかけないように、ベッドアップ機能を利用しながら徐々に体を起こす練習を行います。術後1か月以上になってきたら通常の生活ができるよう、また再発予防を兼ねて体幹や足腰の筋力訓練を行います。

当院では手術後1時間~2時間程ベッドで安静にしていただき、安静後ご帰宅となります。ご帰宅後は治療日にお伝えしたご自宅での運動方法を試していただき、今まで続けていた運動やリハビリも1週間後には再開可能です。

腰部脊柱管狭窄症の再発予防のための運動

手術後、症状が改善したら再発予防のため、腰回りの筋肉を鍛えましょう。腰回りのトレーニングにはアームレッグレイズというよつん這いになって片方の足を水平にゆっくり上げていく運動が効果的です。


NLC野中腰痛クリニックによる脊柱菅狭窄症の治療実績

腰部脊柱管狭窄症の治療実績をご紹介します。中高年以上の患者さまが多く、治療中のご様子までご覧いただけます。当院の腰部脊柱管狭窄症の治療実績はこちらをご覧ください。
NLC野中腰痛クリニックの日帰り腰痛治療の実績は、5,558件(集計期間:2018年6月~2024年2月)

過去に他院にて脊柱管狭窄症に対して外科的手術をされた患者さまです。一時は坐骨神経痛の改善を認めましたが、再発したために再度外科的手術をされました。しかし改善が乏しく歩くこともままならなくなったため、当院にてDST法(ディスクシール治療)を施術し、腰椎の動揺を抑え神経症状の緩和を図りました。


腰部脊柱管狭窄症の治療方法別解説のまとめ

脊柱管狭窄症は特にご高齢の方に多い疾患とされています。重度の脊柱管狭窄症の場合、歩行困難や排尿障害といった日常生活で支障が出ることがあるため早めに医師へ相談することをお勧めします。当院は切開はせず、局所麻酔を使った治療法をご提案しています。体への負担も少ないことからご高齢の方、外科的手術が難しい方にも治療可能な方法です。

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任


腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症とは背骨にある神経の通り道「脊柱管」が狭くなる疾患です。腰痛、足の神経障害や歩行困難などの症状を引き起こします。