概略

腰痛の治療法として、歩行は理学療法などの他の治療法と同様に効果的であることが研究で示されています。歩行は筋肉を強化し、関節の柔軟性を高め、痛みを軽減するのに役立ちます。可能であれば1日20分、早歩きすることを推奨していますが、脊柱狭窄症のある人や腰痛が酷い方は、長く歩くことができない場合がありますので、杖やカートを使うなど無理のない姿勢で歩いてください。


目次

腰痛とウォーキング運動の関係性について

近年、多くの方々がウォーキングを運動手段の一つとして認識し実践されています。特に新型コロナウィルスの広がりにより本格的な運動やリハビリの継続が困難となったため、自宅近くでも容易に実施できるウォーキングが重視されています。先人であるヒポクラテスも、歩行は人間の最良の薬であると説いています。*1
実際に私が診療させて頂いている多くの患者さま(脊柱管狭窄症、椎間孔狭窄症、外側陥凹病変や腰椎すべり症、椎間板ヘルニア等々の病気をお持ちの方)もウォーキングについて、大変興味を持たれており実施されている方も多くいらっしゃいます。


腰痛に対してウォーキングは本当に有効なのか?

研究によればウォーキングは集団運動プログラムや通常のリハビリ(理学療法)と比較して、有効性に差がないとされています。そして、ウォーキングは継続的に続けられる事と費用が安価である事も示されています。*2


ウォーキングをすると腰痛は治る?

研究によると有酸素運動をすることにより「関節の位置や可動域の拡大」「筋力アップによる脊椎の安定化」「運動による痛みの緩和」「内因性物質(体の中の代謝物質)の活性化」が確認されています。*2
慢性的な腰痛を訴える地域住民に対して指導開始1~6カ月後の痛みの程度、日常動作、自己効力感、QOL(生活の質)を確認したところ良い結果が確認されています。特に疼痛が強く運動療法(リハビリ等)が困難な人に対してはウォーキングを取り入れることで運動療法と同様の効果が示されていることも分かっています。*2


脊柱管狭窄症の場合はどんな歩き方・ウォーキング方法が適切なのか?

脊柱管狭窄症の場合は腰を反らないようにして歩くようにしましょう。脊柱管狭窄症の場合、体を丸めると痛みが緩和され、反らせると痛みがでることが多く、無理に体を反ると症状が悪化する可能性があるため、反らせるような体勢は控えるようにしてください。できるだけ無理はせず前かがみで歩くようにしてください。杖をついたり、スーパーのカート等を押すと比較的楽に歩行ができるため体を支える道具を使って歩くことも推奨しています。


どの程度のウォーキングが適切であるのか?

では、どの程度のウォーキングが適切であるのか?に関しては、2016年に英国政府より提言が出されています。*2
報告によれば、1回あたり10分以上の中程度の運動(早歩き、サイクリング等)を1週間当たり150分以上(1日20分程度)行う事が推奨されています。現実問題として、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアや腰椎すべり症等の患者さまでは、1日20分も連続で歩けない場合もありますが、可能な限りウォーキングを実践される方が腰痛に対する運動療法の一環として、また健康維持の一手段として推奨すべきと言えます。以上よりウォーキングは腰痛に対して有効である可能性が高く、1日20分程度、可能であれば「早歩きで継続する」ことが推奨されます。


NLC野中腰痛クリニックによる腰部脊柱管狭窄症の治療実績

腰部脊柱管狭窄症の治療実績をご紹介します。中高年以上の患者さまが多く、治療中のご様子までご覧いただけます。当院の腰部脊柱管狭窄症の治療実績はこちらをご覧ください。
NLC野中腰痛クリニックの日帰り腰痛治療の実績は、5,638件(集計期間:2018年6月~2024年3月)


他院にて脊柱管狭窄症に対して外科的手術を行われた患者さまです。改善することがなく、歩くとしびれが強くなる状態でしたので当クリニックを受診されました。PODT(椎間板オゾン治療)を行ったことで右足のしびれは半分程度まで改善を認めました。



参考文献参照元

*1:Is Walking the Best Medicine for Low back Pain? The BackLetter 25:78,2010.
*2:Hurley DA,Tully MA,Lonsdale C, et al :Supervised walking in comparison with fitness training for chronic back pain in physiotherapy: results of the SWIFT single-blinded randomized controlled traial(ISRCTN17592092).Pain 156:131-147,2015.
*3:Public Health England:Guidance.Health matters:getting every adult active every day.2016.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25599309/
https://www.gov.uk/government/publications/health-matters-getting-every-adult-active-every-day/health-matters-getting-every-adult-active-every-day

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任