患者様の情報

40代 男性

疾患・症状


患者様情報

10年以上、慢性腰痛や坐骨神経領域の鈍痛で悩まれており、直近1年は腰部から下肢にかけての激痛(ナイフで刺す様な痛みと表現されています)で苦しまれておりました。医療機関を受診され内服やブロック注射、リハビリなどの保存的加療を行われておりましたが、改善がないため半年ほど前に当院を受診されました。


治療前のMRI

治療前のMRI

MRIではL4/5、L5/Sは椎間板の変性だけでなく、椎間板容量も大幅に減少しておりますが、脊柱管や椎間孔などの狭窄所見はほとんどありませんでした。L2/3、L3/4も椎間板の変性を認めることから椎間板線維輪の損傷を認める可能性あり、髄核成分の漏出による炎症が原因である可能性が疑われましたので、L2/3-5/Sまでの4箇所の椎間板に対して造影検査を行いました。

造影検査ではL3/4とL5/Sで線維輪の損傷、特に背側の脊椎、神経根方向への漏れ出しを多く認めております。これにより炎症が強いパターンであることが推測されます。一見するとL4/5がもっとも重症なように見えるのですが、画像上の変化(一般的に言われる椎間板の幅や、脊柱管狭窄の程度、ヘルニアの突出、すべり症の程度など)と炎症所見が一致しないパターンであると考えられます。ディスクシール治療を4箇所に対して行いました。

治療後のMRI

治療後のMRI

治療後、1年ほど苦しまれていた激痛は数日で改善し、半年経過後もおさまっている状態でした。改善が極めて早い症例でした。激痛はおさまっているのですが、10年以上悩まれていた腰部から下肢にかけての鈍痛や違和感はまだ残存していることから、現状の評価と今後の見通しについての相談を目的に受診されました。

治療前後のMRIを比較すると、椎間板の容量は維持できており、画像上の悪化は認めておりません。ディスクシール治療は炎症を改善させるための治療法であり、椎間板の容量を増やしたり、脊柱管などの狭いところを広げるのが目的ではありませんので、画像上の変化はありませんが症状は大幅に改善しております。


今後の対策

まだ治療後半年しか経過していないため、まだまだこれから残存している症状の改善も期待できますが、慢性炎症の状態からの回復には時間もかかり、また改善しにくい方もいることが分かっております。そういった患者様に対して、リハビリなどの保存的治療から開始いただき、治療後1年経過後も症状が残存している場合は、慢性炎症からの回復目的で当院ではPRP治療幹細胞培養上清液を用いた再生治療を計画しております。


副院長の一言

治療初期から再生治療の効果を期待したい気持ちはあるのですが、炎症が強い時期には再生は困難でありますので、いかに早く炎症を落ち着かせるかが重要となります。例えるなら火事が起きている真っただ中のところには家が建てられない様な状況でしょうか。当院でも治療初期にPRP治療などの再生治療をトライアルで試した経験がありますが、治療効果は高くなく、半年程度で再発する症例を経験いたしましたので、治療の第一選択とはしておりません。

患者様ごとに画像所見や症状、経過など異なりますので、興味がおありでしたら一度ご相談いただければ幸いです。


治療法

ディスクシール治療(Discseel® Procedure)

治療期間

日帰り

治療費用

1,320,000円~1,650,000円(税込)

リスク・副作用

治療後2週間程度は一時的に症状が悪化する可能性があります。ごく稀に椎間板の容量が増えたことによって周りの筋肉・関節や靭帯などの広がりにより筋肉痛や腰の違和感が出現することもあります。


この記事の著者

医療法人蒼優会理事・NLC野中腰痛クリニック副院長:石田貴樹

医療法人蒼優会 理事
NLC野中腰痛クリニック 副医院長石田 貴樹

2009年:高知大学卒業・医師免許取得、2012年:神戸市立医療センター西市民病院勤務、2013年:兵庫県立尼崎病院勤務、2014年:関西労災病院勤務、2019年:ILC国際腰痛クリニック勤務、2021年:NLC野中腰痛クリニック勤務、2022年:2年間の研修を経て10月にライセンスを獲得、2023年:医療法人蒼優会理事就任・NLC野中腰痛クリニック副院長就任


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