患者様の情報

本日の外来では10年以上腰痛に悩まれている70代男性の患者様が来院されました。坐骨神経痛は軽度でしたが、安静時にも腰痛が持続しており、うつ状態になられていました。

問診票

問診票

患者様の問診票です。(個人情報は伏せております)


診察と検査結果

MRI検査

MRI検査

MRI検査で腰の状態を確認しました。第5腰椎と第1仙骨の間に存在するはずの椎間板が消失しています。

正常な椎間板

正常な椎間板のMRI

異常がない場合は、このように椎間板が存在します。


結果

腰痛の原因は、高度椎間板変性症と診断しました。
高度椎間板変性症とは、腰骨(=腰椎)を支えているクッション(=椎間板)が完全につぶれた結果、上下の腰骨(=腰椎)が常にぶつかり合い慢性的に腰痛が出現している状態を意味します。


対策

椎間板が完全に消失している状態ですので、当院での椎間板再生治療や椎間板修復治療でも治療は困難です。外科的手術(ボルト固定)も長期成績が悪く、リスクが高いと判断しました。基本的には保存的治療(内服やリハビリ、認知行動療法)などを行いながら、腰痛の悪化予防とうつ状態の改善を図るほかにないと判断し、患者様にご説明いたしました。


まとめ

腰骨(=腰椎)の状態から推測すると、数年前に椎間板が完全に消失してしまったものと判断します。少なくとも3年前であれば、当院でも治療が可能で腰痛の改善が図れた可能性が高いと判断します。腰痛治療も癌の治療と同じで、放置しすぎると悪化し、有効な治療すらできなくなってしまうことがあります。腰痛だからと侮らずに、手遅れになる前に医療機関を受診されることが肝要だと考えます。


院長の一言

腰痛を放置せずに早期に介入できれば、簡単なリハビリを行うだけで椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症への進行を予防することも可能です。反対に腰痛を放置した結果、手の打ちようがなくなってしまうこともあります。人生一度きりですから、楽しく生きるために腰を大切にしていただければと思います。


治療法

DST法(ディスクシール治療)

治療期間

日帰り

治療費用

1,320,000円~1,650,000円(税込)

リスク・副作用

治療後2週間程度は一時的に症状が悪化する可能性があります。ごく稀に椎間板の容量が増えたことによって周りの筋肉・関節や靭帯などの広がりにより筋肉痛や腰の違和感が出現することもあります。


この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任