患者様の情報
30代 男性(オーストラリア籍)
疾患・症状
- HIZ(High Intensity Zone)
- 椎間板変性症
状態
1年前から腰痛と左下肢の疼痛・しびれに苦しみ、改善しないため、米国のDrパウザにコンタクトを取ったところ、当院を紹介していただきました。
検査
MRI検査

MRI検査ではL3/4、L4/5、L5/Sの椎間板変性を認め、L4/5ではHIZ(High Intensity Zone)を認めます。


椎間板の膨隆は右側に認めますが、症状は画像とは反対側の左側に認めます。
診断
検査結果(椎間板変性とHIZ)を患者様にお伝えするとよく不思議がられますが、これこそ炎症が原因であるからにほかなりません。画像上、ヘルニアによる神経の圧迫があっても症状が全くないケースが多くあることと、ヘルニアも狭窄も無いのに症状だけがあることと同じなのです。
治療方針
ご年齢は若いですが、損傷が進行していることから、現在の症状の改善と将来的な椎間板の保護温存のためにもディスクシール治療のとても良い適応と考えます。治療箇所はL3/4、4/5、5/Sの3箇所だけではなく、損傷している部位に隣り合う椎間板は例え一見して損傷が無いように見えてもしっかり検査をすることが重要であり、プロトコールでも決められています。この患者様はまさにこのことを痛感する症例でもありました!早速、Annulogram検査を行いましょう。
治療
Annulogram(アニュログラム検査)
L2/3はMRIでは損傷を疑う所見が無かったのですが、造影してみると予想に反して意外と大きな損傷がありました!!しっかり検査をしてよかったと感じる瞬間です!椎間板の状態が良いので、この段階での修復は奨励的にも大きなメリットがあります。
L4/5はHIZに一致した大きなリークがありました。
治療前後のレントゲン写真

4箇所の椎間板をディスクシール治療をし、きちんと修復できました。
まとめ
画像上ほぼ狭窄がありませんので、原因は炎症の可能性が高いと考えられます。治療効果を期待したいところですが、症状が1年続いていることから慢性化している影響がどれくらいあるのかが気になります。海外の患者さまですが、今後もしっかりとフォローをしていきます。どれほど多くの症例を経験し、分かったつもりでいても分かっていないことがありますので、基本に忠実にしっかりと検査と治療を行っていきたいと思います。
副院長の一言
最近ますます寒くなってきていますね。毎朝、山の中腹から自転車で下山して出勤しているのですが、山を下りだして直ぐに両足首に刺す様な痛みを感じ、何事かと思い自分の足を見たのですが、くるぶしより短い靴下をはいていたことで寒さで足が悲鳴をあげていた様です。駅に着くまで何とか耐えきりました。明日は忘れないように長い靴下をはいてきます。
今回の治療法
ディスクシール治療(Discseel® Procedure)
治療期間
日帰り
治療費用
1,320,000円~1,650,000円(税込)
リスク・副作用
治療後2週間程度は、一時的に症状が悪化する可能性があります。ごく稀に椎間板の容量が増えたことによって、周りの筋肉や関節、靭帯などの広がりにより、筋肉痛や腰の違和感が出現することもあります。
関連するの疾患と症状
椎間板変性症
椎間板変性症とは、背骨の間にある椎間板(ついかんばん)が変形する疾患です。椎間板の変形により、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症などの様々な病気につながる恐れがあります。
この記事の著者
大阪本院 副院長石田 貴樹
2009年:高知大学卒業・医師免許取得、2012年:神戸市立医療センター西市民病院勤務、2013年:兵庫県立尼崎病院勤務、2014年:関西労災病院勤務、2019年:ILC国際腰痛クリニック勤務、2021年:野中腰痛クリニック勤務、2022年:2年間の研修を経て10月にライセンスを獲得、2023年:医療法人蒼優会理事就任・野中腰痛クリニック副院長就任