慢性の頭痛と腰痛の関係について 序論

目次

はじめに

先日、50代後半の女性腰痛患者様が来院されました。お話を伺うと、腰が痛くなると頭痛もひどくなることに気づかれ、「これは何か関係あるかもしれない!」と当院に予約を入れられたそうです。慢性的な腰痛も頭痛も日常生活に支障をきたす原因ワースト5であることでしょう。医療の専門家は基本的に腰痛と頭痛を別々に扱いますが、一部の研究者は症状が同時期に現れることから、腰痛と頭痛を1つの障害として治療するとより良い結果が得られるのではないか、という考察を持っていたりします。果たして慢性頭痛と腰痛をつなげる科学的な証拠があるのでしょうか?
今回は、慢性頭痛と腰痛の関係についてお話ししたいと思います。


結論

最近の研究で腰痛と慢性頭痛の関連性を示唆する新たな知見が続々発表されます。


腰痛と慢性頭痛の研究

Multicenter Study誌(2013年)

ドイツの研究機関によると、慢性頭痛を持っている人は、頭痛がない人より頻繁に腰痛を発症する可能性があると示唆されました。その数は約13倍から18倍とかなり大きな差です。

Journal of Headache and Pain誌(2019年)

イギリスのウォーリック大学の研究者が掲載した論文によると、慢性的な頭痛と腰痛の両方を持っている患者は、いずれかの障害しか持っていない患者の2倍以上の人数がいることを突き止めました。因果関係の特定には未だ至ってはいませんが、今後の研究に期待が持てる内容だと思います。


まとめ

慢性頭痛と慢性腰痛を持つ人々や今後なるかもしれない人々に適切な治療や予防医学を受けられるようにすることは、生活の質を向上させる社会にしていくことだと思います。腰痛と頭痛、両方の障害を持っている患者様は勿論、いずれかの症状に悩まされている患者様も我慢せず、お近くの医師に相談して、出来るだけ早く問題を解決しましょう。それが間違いなく健康的な人生を長く送る方法だと考えます。

慢性の頭痛と腰痛の関係について 結論

参考文献参照元

①Chronic migraine and chronic tension-type headache are associated with concomitant low back pain: results of the German Headache Consortium study - 2013 - Min-Suk Yoon, Aubrey Manack, Sara Schramm, Guenther Fritsche, Mark Obermann, Hans-Christoph Diener, Susanne Moebus, Zaza Katsarava - Multicenter Study (Volume 154, Issue 3, P 484-492)
②The association between headache and low back pain: a systematic review - 2019 - Arani Vivekanantham, Claire Edwin, Tamar Pincus, Manjit Matharu, Helen Parsons, Martin Underwood - The Journal of Headache and Pain (Volume 20, Issue 1, P 82)
③Low Back Pain, Abdominal Pain and Headache - 2020 - Robert W. Baloh - Medically Unexplained Symptoms (P 117–139)
④Persistent headache or back pain 'twice as likely' in the presence of the other - 2019 - Warwick Medical School and Department of Physics

参考文献のリンク

Chronic migraine and chronic tension-type headache are associated with concomitant low back pain: results of the German Headache Consortium study
The association between headache and low back pain: a systematic review
Low Back Pain, Abdominal Pain and Headache
Persistent headache or back pain 'twice as likely' in the presence of the other

この記事の著者

医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

医療法人蒼優会 理事長
NLC野中腰痛クリニック 院長野中 康行

2002年:川崎医科大学卒業・医師免許取得、2006年:神鋼加古川病院(現加古川中央市民病院)勤務、2011年:医療法人青心会郡山青藍病院(麻酔科・腰痛外来・救急科)勤務・医療法人青心会理事就任、2018年:ILC国際腰痛クリニック開設、2020年:医療法人康俊会開設・理事長就任、2021年:NLC野中腰痛クリニック開設、2023年:医療法人蒼優会開設・理事長就任